「寿(ことぶき)退社」に追いやる社会ってなに?

2008年4月10日 11時54分 | カテゴリー: 市民参加のまちづくり

NPOの担い手からのSOS

すぎなみ地域大学で「公共サービス企業講座」が開かれます。その第3回目「NPO現場体験学習」の講師を務める田邊健史さんのお話を聞く機会が「おぎくぼ塾」でありました。
田邊さんは学生のころから環境活動やまちづくり活動に取り組み、いったん民間企業に就職したものの、現在はNPOサポートセンターで、NPO活動を支援する仕事をしている29歳。

考えさせられたのは、「男の寿(ことぶき)退社」。聞いたことがありますか?これまで「寿退社」は、女性が結婚を機に退社することを指す言葉でした。
結婚を機に収入の良い企業に転職することを言い、いま、NPOで仕事をしてきた男性が食べていける職業(一般企業)に転職する時に使われるのだそうです。しかし、それを迎える一般企業はNPO専従経験者を「まったく役にたたない」としか評価しない、と嘆いていました。営利企業である一般企業が、非営利事業をしているNPO育ちの人を同じ尺度で評価しようとすること自体に問題があると思います。NPO専従経験者を優先して採用する企業(経営陣)が増えていくことも必要ですが、「NPO」で食べられるようにならなければ嘘ですね。

彼自身もGRASS「持続可能なNPOスタッフを考える会」という任意組織を立ち上げ、さまざまな市民活動の下支えに奮闘しているとのこと。NPO活動が無償のボランティアの延長上にあるのではなく、市民の新たな働き方といったところから考えれば、それに取り組む人たちの生活が成り立つことが必要です。NPO活動を認める社会的な背景と信頼関係が両輪となり、経済的な面が推進力となってはじめてかなうことだと思います。そして、きわめて政治的な問題でもあります。
持続可能なNPO事業にしていくためにはどうしたらよいのか。彼も理念と現実との狭間で悩んでいる状況でした。「これから子どもができたりすると、このままでは生活していけない」と。若い人に夢と希望を与えられない社会はなんなのだろうか。

杉並区内に273団体のNPO法人があります。これら団体は毎年、活動報告書を都に提出をしますが、収支報告書には事細かなチェックが入ります。事業部門ごとに収支を書く、バランスシートをつくる、財産目録をつくる等など、普通の素人が簡単に書ける代物ではありません。経理経験者や会計士がいれば簡単なものなのでしょうが。その一方で、どういった活動をし、成果をどうあげたのかについては数行程度の記述欄になっており、山ほど書いたら都から書き直しを命ぜられたという団体もありました。活動を外からチェックするには収支の公開もありますが、その団体がなにを目的にしてどういった事業をし、どういった成果が得られたのかが大事だと思います。
NPO法が施行され10年が経ち、「NPO」と一緒に歩む社会のあり方を問い直す時期に来ているのではないでしょうか。

写真 神田川ネットワーク代表の糸井守さんと 会派控え室で